 青木さんが燻製にはじめて出会ったのは、30歳を過ぎたころでした。
火山写真家でもある青木さんが、火山の撮影に諏訪之瀬島へ渡っていたときに、島で採れる地元の魚を使って燻製を作っておられている方がいたそうです。
その燻製は食べてみて、とても美味しかったそうです。
それは島にある原木を使い、島で採れた新鮮な魚をスモークするというもの。
原木を燃やしゆっくりと時間をかけて燻す。それはチップを使った簡易スモークや業務用の短時間で作られるものでは出ない、原木が持つ悠久の時間を感じさせる本物の味でした。
新鮮な素材を丁寧に下処理し、素材にあった原木を選び温度を見ながらゆっくりと時間をかけてスモークする。
この昔ながらの当たり前とも思えることが、本物の燻製をつくる上でとても大切なことでした。
青木さんはこの一見当たり前とも思えることが今、世の中では少なくなっているといいます。
「美味しいものを作るのに、楽な方法なんてない。苦労なしにいいものなんてできないよ。」
と青木さんは燃えている火を見ながら言います。
燻製の味に魅せられた青木さんは、地元に帰って燻製づくりをはじめます。

燻製づくりをはじめた青木さんでしたが、最初は火加減や燻す時間も含めて、苦労の連続でした。
一番難しい、燻製の温度管理。そして、燻す時間。
どの原木をどのくらいの温度でどのくらいの時間燃やすのか。
温度管理を間違えると素材が身崩れしたり、水っぽくなったりして美味しくありません。
ゆっくりと旨みを凝縮させるためには、素材に合わせた微妙な火加減が重要なのです。
美味しくできるかどうか、本物の燻製になるかどうかは、これで決まります。
一旦燻製をはじめると温度計の前から離れることはできません。一見燻すだけのように見える工程の裏側には、きちんと火と向き合うということがありました。
諏訪之瀬島で食べた本物の燻製の味、そしてきちんと火と向き合いたいという思いから、青木さんは時間をかけてじっくりと燻製作りに取り組みます。
こうして数年の試行錯誤の上、青木さんの燻製は生まれたのです。 |